修也は父の犯した失態により、負い目を感じていた。
(そうだ……僕は父さんの罪も背負っている。それに自分は社長になれる器の人間だとは思えない……)
だが、一方の翔は野望に満ちていた。全ての始まりは絶対に自分が社長に任命されるに違いないと思った7年前から始まる。
その為には猛にとって目の上のこぶのような明日香との……ましてや戸籍上の妹と恋仲というスキャンダルを隠す必要があった。
そこで企てた偽装結婚だったのだ。それなのに翔の運命は大きく狂ってしまった。明日香に逃げられ、気づけば朱莉に恋をしてしまっていた。
だが朱莉からはあくまでも蓮の父親としてしか見てもらえない。
挙句の果てに10年間存在を消していた修也が現れ、あっという間に自分はアメリカに行かされた。今本社の副社長室の椅子に座っているのはモニター越しに映っている自分の顔によく似た修也なのだ。
しかも朱莉が修也に惹かれていることも理解していた。
翔はモニターに映る修也をじっと見つめる。
(修也……お前には社長の座は渡さない。そして朱莉さんだって……今は俺の大事な女性なんだ……!)
翔と修也の思惑をよそに会長は口を開いた。
『翔と修也……この2人のうち、どちらを次の社長にするかは9月に行われる役員会議で決めたいと思う。いいか? 2人とも。次期社長に選ばれる為にそれぞれ実績を積んでおけよ?』
猛は翔と修也を交互に見つめた。
『はい、任せて下さい、会長』
翔は自信たっぷりに返事をする。
『はい、分かりました』
修也は頭を下げた。
『2人とも……頑張りなさい』
竜一は笑顔で2人に声をかける。
『では、私はこれで退席する。これから病院に行って検査を受けて来なければならないからな』
そしてモニター画面から猛の姿が消えた。
『私も失礼するよ。……久しぶりなんだ。2人で話をするといい』
竜一も画面から消え、今修也のモニターに映るのは翔のみとなった。
「こうして顔を見合わせて話をするのは久しぶりだね、翔」
『ああ……そうだな』
翔は不愛想に返事をする。
「どうだい、そっちの方は? 軌道に乗ってるかな?」
『勿論だ。従業員も増えたし、支店も増えている。業績だって上がってきているだろう?』
「うん、そうだね」
修也は笑みを浮かべた。
『11月には……たとえ俺が社長に選ばれようが、選ばれまいが、日本に帰国することが決まった。俺の